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PRIMA GAKKI
 

  コロナ禍での楽器との付き合い方:
               ヤナギサワサクソフォーン等の消毒の影響について

(2021/02/04 掲載)


新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、手洗いや消毒の必要性が広く認知されて、日常生活の中で消毒薬や除菌剤を使用する機会が多くなりました。

「新型コロナウイルスに有効な消毒・除菌方法について」は、厚生労働省・経済産業省・消費者庁が合同で、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)による実験結果などを受けて、下記ページに感染予防や対策、そしてモノに付着したウイルス・空気中のウイルスへの対策、空間噴霧について、具体的に対処法などを掲載しています。

新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html


楽器演奏や楽器のお取り扱いに際しても、いままで以上に消毒・除菌を意識して対策を行なっていらっしゃる方も多いと思います。しかしながら、消毒薬(特に塩素系消毒薬)は、楽器に変色や変質、劣化などの影響を及ぼすことも確認されており、お取り扱いには注意が必要です。このたび 柳澤管楽器 が実施した「消毒液ラッカー耐久テスト」の結果なども踏まえ、注意事項をまとめてみましたので、大切な楽器を良い状態に保つためにも、ご一読いただけましたら幸いです。

 消毒薬を使用する際は…

サクソフォーン本体、金属製マウスピースは、「消毒用エタノール」を柔らかい布に染み込ませ、やさしく拭きます。
そのあとすぐに、乾いた布で、拭き残しのないよう拭き上げてください。

 ご注意


塩素系消毒薬は、SAXには使用しないで!

塩素系消毒薬は、ご使用にならないでください。

塩素系消毒薬に含まれる成分により、金属の腐食・劣化や変色、ラッカーの変色や剥がれ等につながるおそれがあります。





消毒液の直接塗布や噴霧、浸け込みはNG

楽器本体やキーパーツに消毒液を直接塗布・噴霧したり、キーパーツ等を消毒液に浸け込んだりしないでください。

消毒薬がキーシステムに入り込んでしまうと、金属の劣化やシステムの動作不良につながったり、タンポやコルクに付着すると劣化したりするおそれがあります。


手指消毒のあとは、手指が十分に乾いてから!!

乾拭きするときはこすり過ぎにも注意!!

手指消毒のあとは、手指が十分に乾いたことを確認してから楽器に触れるようにしてください。

消毒薬が手指に残っていると、特に拇指台(サムレスト)や指掛け(サムフック)、サイドキー等の指が触れる部分も腐食・劣化しやすくなるおそれがあります。消毒薬が付着した場合は、 乾いた布で乾拭きしてください。その際、こすり過ぎによる傷にもご注意ください。





エボナイトには、塩素系やエタノール系の消毒薬、そして熱を加えることはNG

エボナイト製マウスピース、Yany SIXSリガチャー(スペーサー部分がエボナイト)には、塩素系やエタノール系の消毒薬はご使用にならないでください。また、変色・変質のおそれがあるため、熱湯消毒など、熱を加えることもおやめください。

エボナイト製マウスピースを消毒する際は、冷水で、中性洗剤(詳しくは 新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について をご参照ください)をつけて優しく洗い、流水でしっかりとすすいでください。


ケースの消毒にも注意が必要

ケースの消毒にも注意が必要です。

ケース内に消毒スプレーを使用した際は、楽器を入れる前に、完全に乾いていることをご確認ください。
また、乾いても成分が残ることもあり、密閉したケースの中では、消毒液の成分によっては楽器に良くない影響を及ぼす場合もありますので、充分ご注意ください。






 消毒液ラッカー耐久テスト

柳澤管楽器 が実施した「消毒液ラッカー耐久テスト」(2020年10月~11月に実施)の概要をご紹介します。
下の表は、テストパーツとして新品状態(工場出荷時の状態)のヤナギサワサクソフォーンのラッカー仕上のサムフック・サムレスト・抜き差しネジ(傷口からの影響も調べるため、抜き差しネジには傷をつけています)を用意し、まで8種の各消毒液に浸け込んで約1ヶ月間経過観察を行ない、薬剤付着による変化を次の5段階に分けて検証したものです。

Level 1  表面に薄く変化あり
Level 2  ラッカーが浮き始める
Level 3  ラッカーが剥がれ始める
Level 4  ラッカーが剥がれ落ち、地金の変色が始まる
Level 5  地金の変色が大きく起きる
分類 エタノール(アルコール系) エタノール(アルコール系) エタノール(アルコール系)
成分 エタノール エタノール
添加物(イソプロパノール含む)
エタノール
グリセリン脂肪酸エステル
グリシン
乳酸ナトリウム
1日目 - - サムフックのネジ穴付近に2mmほどのモヤがかかる。
2日目 - - サムレストの脇が青く変色。ラッカーも剥がれ落ち始める。サムフックもモヤの部分から剥がれ落ち始める。
3日目 - - サムレストの裏側も青く緑青が出たような状態になっていた。
約1週間後 反応なし 反応なし さらにラッカーがダメージを負った状態に。
約1ヶ月後 反応なし サムレストの表面にふつふつとした荒れが起きている。 ラッカーが剥がれ落ち、コバルトブルーのような青色に変色。
変化
分類 エタノール(アルコール系) エタノール(アルコール系)
成分 エタノール
グリセリン
ジソフィラン
塩化ベンザルコニウム
エタノール
グリセリン
1日目 - -
2日目 反応なし -
3日目 - -
約1週間後 - 反応なし
約1ヶ月後 ジェル状だった液体はサラサラの液体に。液体の色は水色に変色。抜き差しネジの根元に青く緑青が出ている。 サムフックの止めネジ穴付近に小さなダメージあり。
変化
分類 次亜塩素酸ナトリウム水(塩素系) 二酸化塩素水(塩素系) カルボン酸系
成分 次亜塩素酸ナトリウム(塩素系)
水酸化ナトリウム(アルカリ剤)
アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(界面活性剤)
※濃度0.05%に希釈
二酸化塩素 カルボン酸系有機物(食品添加物複合体)主成分
クエン酸ナトリウム
1日目 - ラッカーが荒れ一部赤味がかった色に変色。塩素系のにおいも強い。 -
2日目 反応なし - -
3日目 - - -
約1週間後 - - 6日目あたりからサムレスト、サムフックに白くモヤがかかった状態に。
約1ヶ月後 3週目あたりから、サムレスト表面に、白くモヤがかかったようなラッカーへの腐食を確認。 さらに広範囲にわたってラッカーにダメージ。 モヤがかかったあたりからラッカーへの腐食を確認。
変化

検証の結果、エタノール100%ではほとんど変化が見られませんでしたが、エタノールが主成分であっても他の含有成分によっては、約1ヶ月後にはおおよそLevel1~3の症状が現れることとなりました(中には変化が著しくLevel5のものも)。一方、塩素系の薬剤は、次亜塩素酸ナトリウム水(塩素系漂白剤)は3週目あたりでLevel3の症状、二酸化塩素水は1日目からLevel5と、大方が著しい変色・変質を招く結果となりました。ただし、薬剤はメーカーにより含有率や成分が多少異なるため、この結果がすべてではありません。ひとつの目安としてご参考にしていただけましたら幸いです。

 おさらい:楽器のお手入れの際、消毒薬を使用する場合は…

サクソフォーン本体、金属製マウスピースは、「消毒用エタノール」を柔らかい布に染み込ませ、やさしく拭きます。
そのあとすぐに、乾いた布で、拭き残しのないよう拭き上げてください。

エボナイト製マウスピースを消毒する際は、冷水で、中性洗剤をつけて優しく洗い、流水でしっかりとすすぎ、水分を拭き取ってください。

尚、上記のお手入れは、新品(工場出荷時)の状態を想定したものです。お使いの楽器の状態によって影響は異なると思われますので、ひとつの目安として捉えていただき、ご自分の楽器に合った方法でお手入れしてください。また、日頃からの手洗い・うがいをはじめとする体調管理に加え、楽器を演奏する前後には手洗い・うがいをすること、楽器をお手入れしたスワブやクロスはこまめに洗濯をして清潔に保つことなどを習慣づけ、ご自身の健康と大切な楽器を良い状態に保ちながら末永く演奏をお楽しみいただけますよう、願っております。